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名器誕生100年史 – アンティーク・クラブ

アンティーク・クラブ

通常アンティークとは製作されてより100年以上経っている物を指すが、クラブの世界では、ヒッコリー材シャフトを含む、それ以前のウッドンシャフト装着のクラブを指す。周知のとおり、20世紀に至るまでのウッドンヘッドは、三日月型形状を伴ったクラブであり、一般的には「LONG NOSED SCARED HEAD」(ロングノーズド・スケアードヘッド)と呼ばれていた。ヘッドの材質には、リンゴ、ナシ、シデ、ミズキ、ブライア、サンザシ、ブナ等、実に様々な木が使われており、またシャフト材には、トネリコ、パープルハート、ランスウッド、レモン、リンゴ、オレンジ、グリーンハート等が使用されていたのだった。

当初は1本のムクの木からの削り出しで、ヘッドとシャフトが一体のものであったが、一度折れると修復に困難を極めた。18世紀後半より19世紀にかけてゴルフは非常にポピュラーになってきた。

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SIMON COSSAR(サイモン・コッサー)、DOUGLAS McEWAN(ダグラス・マックイーワン)、そして著名なHUGH PHILLIP(ヒュー・フィリップ)などの名匠といわれた職人が誕生してきた時代でもあった。なかでもMcEWANは百合の根を利用して作るパイプにヒントを得たのだが、山査子の曲がった根のカーブがクラブヘッドの形状に適していることに目をつけ加工し、それにシャフトを装着したクラブを創りだした。この新しい方法は製作日数の短縮と修理が簡単になったことなどコストの面でも大いに役立った。この方法を当時の職人達は、SCARE(スケアー工法)というふうに呼んだのだった。しかし、ヘッドネックとシャフトを互いに斜めにカットして接着するという工法は所詮フェザーボール(皮袋に羽毛をかたく詰めたボール)用のクラブであり、1800年中頃にパターソンのアイデアによって開発されたガータパッチャ(ゴムボール)が出現すると、ボールの強度に耐えることができなくなり、多くの破損クラブを生んでしまった。

クラブ写真4
そこで名匠と詞われたHUGH PHILLIPの甥であったROBERT FORGAN(ロバート・フォーガン)(1824〜1904)は、ヘッドのネックに孔をあけ、その中にシャフトを挿入することによって強度を得るクラブ工法を創りだしたのであり、今日の制作方法の基礎となったのだった。

当然の如くクラブヘッド形状にも改良が加えられるようになり、三日月型細面でのクラブから、丸型で肉厚の形状のクラブの方が飛距離と耐久面で優れていることが判り、フェザーボールからガーターパッチャ・ボールへの変換はロングノーズド・スタイルのウッドに別れをつげさせたのだった。

LONG NOSED WOODは、クラブの歴史上、その形状、色、雰囲気など、すべてが工芸的であり、当時の職人は言うに及ばずプレーヤーも1つのARTとして捉えていたのであろう。「THE ART OF GOLF」(Sir W.G.SIMPSON/サー W.G.シンプソン著1887年)の中に表現豊かな紹介があるので是非ご紹介しておこうと思う。

「皆さんがお持ちのプレイクラブは多くの部分から成り立っている。クラブには足がない。その代わりに“シャフト“がある。それに爪先もある。その爪先(TOE)はクラブの顔(FACE)の先端にあって、鼻(NOSE)のそばにあるが、鼻は顔にはない。クラブには胴体はないが、足裏(SOLE)がある。頭(HEAD)もあり、さらに角(HORN)までもある。クラブの顔にはちょっとした表情がある。通常そこは木であるが、時として鉛のボタンが付いている。しかし、ボタン孔はない。ヘッドは黒や黄色と色がついているが、これは別に人種差別をしているわけではない。」更に行を換えて、「爪先(TOE)は顔(FACE)の先端を指し、鼻(NOSE)はクラブヘッドを上から見たときの先端をいう」。

ウッドクラブの各部分を人間の身体に凝って説明しており、どうもNOSEは人間のNOSEの位置とは関係がなさそうだ。

クラブ写真5
さて、ゴルフクラブの世界ではウッドクラブが先行してプレイングされてきたわけだが、ゴルフ史記の中で最も古く“アイアン”と明確に文章として残っているのは、MONTROSE(モントローズ)侯爵家の記録の中に、「バンカー用クラブとアイアン、そしてプレイクラブ」を購入とあったからで、多分16世紀後半に製作されたものであろうと推定されている。掲載されている写真の中に“BLACK SMITH(ブラック・スミス/鍛冶屋)のTRUCK IRONが約1790年作”とあるが鍛造品である証拠としてフェース面に何層もの筋が観える。

またアイアンは古いものほどネックの長さが長く、6インチ等というものもある程だ。今日で言うところの“イン・ザ・ホーゼル”であった為、折れやすくネックを短くするということが難しかったからだ。

あるがままの状態で打つ、という規則から発達したゴルフには、時として非常にユニークなデザインのクラブが出現したものだ。

“RUT”アイアン。RUT(ラット)とは轍のことを指すから、当時コース内を横断した荷馬車などの車輪跡地にはまったボールを救済するために考案された史上最も面積の小さなクラブであり、やはり掲載してある史上最も大きな面積を有する“GIANT NIBLICK”(ジャイアント・ニブリック)との比較写真をご覧頂くとその対象的な差が十分お判り戴けることと思う。ちなみに、このGIANT NIBLICKの元祖は、セントアンドリュースのプロ、ALLAN ROBERTSON(アラン・ロバートソン)が創意製作したもので、その形状から“フライパン”と名付けられていたクラブだ。

また雨中か、水溜りの中から脱出させるために、フェース面に多数の小さな穴をあけたパターや“WATER IRON”と呼ばれたように、フェース面に一つ大きな穴をあけたアイアンもあった。更に芝刈機を思わせるような“RAKE(熊手)”アイアンなどなど、ゴルフに懸ける先達の思い入れが十二分に伺えよう。

使用ボールが皮製のものであれば、鉄製ヘッドで打つと当然傷みもはやく、自然とアイアンの急速な進歩という時代ではなかった。

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